ZENトレプレナー対話

「森の営みに学ぶ」(前編)

~普段見ないものを見ることによって増える視点~

2025年秋に開催した西湖リトリート。樹海ウォーキングで森のガイドをしてくれた北山哲平さんをお招きして、振返りの対話を行いました。それぞれが樹海ウォーキングで印象に残った風景の写真を持ち寄り、当時感じたことを思い出しながら語らいました。

吉田:
はい、じゃあですね、私が選んだ写真は……この写真なんですね。これを選んだ方もいらっしゃるかもしれませんが、いろいろたくさん写真がある中で、ここは非常に強烈だったんです。これは2年ぐらい前の写真なんですが、幹が途中で曲がって……ここが結構力強くてですね。また、上に上がっている。

 

どんな説明だったかちょっと忘れてしまいましたが、「人生いろいろ苦難なときがあると結構大変なんだけど、その後順調にいく」っていうね。上に向かって上がった姿に「力強いな」っていうのをすごい感じたんですよね。樹の生命力というか、どんなことがあっても上に行くぞっていう。すごい樹の生命力の強さというものを感じました

 

なんとなく、この木自体がとても僕にとっては貴重な存在で。北山さんの説明では、「木の根が人間の脳にあたる機能がある」というようなことを聞いたんで、おそらくこの地面の地中に見えないところ、土壌とかそのあたりが、この困難を乗り越えさせるためのいろんな知恵だとかエネルギーだとか、いろんなものがここに作用したんだろうな、なんて改めて思いながらこの写真を見ました。

 

北山:
そうですね、これ樹海の典型的な木の育ち方だと思うんですね。「倒れやすい」っていうのが、まず樹海の地盤の特徴です。なぜ倒れやすいかというと、土壌が大事なんですが、土がない、あるいは固いんです。そうすると根が下に張っていけなくて、根は地表を這うだけみたいな感じになるんですね。

 

その下の溶岩ですら崩れやすかったり、あとは溶岩が崩れなくても、しっかりと地中深く根を張ってるわけじゃないので、多少の風で倒れてしまうんです。でも、倒れてしまっても、もともと少ない養分や水分で生きてきているので、根がむき出しになっている状態っていうのが当たり前になっていて、それでもやっぱりまた光に向かって伸びていくんですね。成長を続けていく。もちろんそのまま倒れて枯れる木もありますし、倒れたまま生き続ける木もあります。

 

面白いのが、うちは今、薪ストーブがあるので薪割りをよくするんですけど、こうやって曲がった木だったりとか、途中で曲がって伸び直した木、節がたくさんある木っていうのは強いんですね。割りづらいし、切りづらいんです。こうやってさっきの「苦労をして」っていうお話でいくと、苦労してグネグネっと曲がった木は、実はどんどんどんどん強くなっていっているんですね。外圧に対してとても強くなっていっている。

 

樹海の中はこういう森なので、台風とか風が吹くと木が倒れやすいんですけれども、こうやって向きを変えて何度も何度もグネグネって伸びた木は、台風のときとかにも倒れづらくなってます。ただ、「苦労して落ちたところがあんまり良くなくて、苦労してこうやってどんどんどんどん育っていって」というのもあるんですけど、必ずしもそうかというとそうでもなくて。すごく良いところに落ちて、まっすぐ伸びてそれで倒れないっていう木も、もちろんいます。なので何とも言えないというか、完全に当てはめることはできないですけど、そんな感じで木が生えていますね。

 

成澤:
まさにですね、僕も今の話聞きながら、僕が出そうとしてた写真も一緒だなと思っています。写真が違うだけで同じようなことを感じていました。

 

これ、いったん倒れたんですかね? 何か倒れた後にまた伸びていったのかな、みたいな気もしますけれども。

角度によっては、僕は最初なんか大砲っぽいな、みたいな感じで見たんですね。その後、北山さんから「鹿みたいじゃないですか」みたいなことをおっしゃっていただいたりして、「確かにな」と思ったりとか。なんかすごい逞しいなっていうことも感じながら、ここまで横に行っておきながらまだ頑張るんだ、みたいな。

 

この後だったと思うんですけど、ねじれて育った木……なんかもうこれは朽ちて表皮が剥がれて、中身が見えるようになってるものですけれども、これもなんかすごい頑張ってよじれながら伸びていったんだなと。

 

それこそ薪割りなんかすごいしにくそうな木だな、なんて今の話聞きながら思ってましたけど。何かこう、「よじれるほどに強くなる」みたいなことっていうのは、何か大事なイメージなのかもしれないなっていうのを、改めて今、北山さんの解説も聞きながら思ったところでした。

 

北山:
そうですよね。寄り道するとどんどんどんどん強くなっていくようなイメージですね。「こっち行って、こっち行って」って寄り道すると強くなっていく。ただ、これ木が全て育ってしまったらどうなのかっていうと、倒れる木がなかったらどうなのか。それはそれで困るんですね。

 

倒れる木もあるからこそ、その倒れた木が養分になったりとか、その倒れた木、朽ちていった木っていうのは、虫だったりとか鳥とか……虫がまずは棲みやすいんですね。虫がまず中に入っていて、それを取るために鳥が来て、なんていうふうになっていくので。倒れる木、枯れていく木っていうのが出てこないと、正直困るんですね。それも全部役割があって。いい役か悪い役かわからないですけど、必ずそれぞれに決められている役割があって。でもその中で、やっぱりみんな精一杯生きているっていう感じなんですけど。

 

もう少し深くお話すると、森一つを生き物として見た場合に、木は一つの細胞で、この細胞の役割はこれで、みたいな感じで決まっているようなイメージで私は森を見ていたりします。

 

成澤:
そこの「それぞれに役割がある」みたいなこととか、それを「生き物として見たときに」っていう考え方ってすごい大事だなって思ってですね。コーチングとかしてて、たまに「それぞれに存在意義があるはずだ」みたいなことを前提に問いかけることがあったりするんですけど。リトリートに行って、その解説受けて、「確かにな」って腹落ちしてから話すと、自分の言葉の重みがちょっと変わったな、みたいな感じがあったりとかして。はい、なんかいい体験をさせてもらったのが今ちょっと蘇りました。

 

北山:
前回少ししたお話なんですけど、樹海に入ったときに……樹海から出たときですかね。樹海と山の間に、大きな桂(カツラ)の木があったの覚えてますかね? 大きな、いい匂いがする木ですね。これも役割で考えていくとすごく面白くて。

 

あ、写真が出てきた、嬉しいです。これ、葉っぱがいっぱい落ちてるんですけど、実は葉っぱからすごい甘い匂いが……秋だったのでしたと思うんですけど、あれ、糖分がすごく残ったまま葉を落としているんですね。

植物の基本的な戦略として、冬は大変なんです。なので、全部栄養とか糖分を回収していくんですね。葉っぱから全部抜いて、根っこに戻していく。根っこが一番安全な部分なので、根っこに戻していくんです。で、根っこに戻していって、また春にスタートダッシュできるように蓄えておく、もしくは冬を越せるように使っていくんですけど。

 

木の種類によっては、木の中を通る水に糖分を入れていくんですね。糖度を上げると冬に凍らなかったりとかっていうふうに使っていったりするんですけど、桂の木は糖分たっぷりで落としていくんですね。だからあの甘いキャラメルのような匂いがして、英語では「キャラメルツリー」って呼ばれたりもするんですけど。

 

これがなぜ糖分を落としているのか。一見、栄養の無駄に見えるかもしれないんですけど、糖分を含んだまま落とすことによって、それに集まる微生物だったりが増えるんですね。そうすると分解が早まります。その場所の土がどんどんどんどん早く作られていく豊かになっていくんですね。栄養が土全体に戻されていきます。

 

なので、「木々全部が受ける」っていうよりは、「その桂の木が生えている全体を潤す」っていうような感じで、自分もその恩恵を受けるみたいな感じで、実はカツラの木はやっているんですね。そんなことを考えてはやっていないと思うんですけど、長年やってきた中で「これが一番理想的だな」「自分に合ってるな」って思ったんだと思うんです。「全員このエリアで勝っていこう」みたいな感じでやってたりするんですね。

 

吉田:
役割っていうのが、森を歩いてみるとよくわかりますよね。朽ちたやつも、朽ちたからこそ土壌が豊かになるとか、今のお話もそうですけども。

何か一般的には、「朽ちて使えない人間はダメだ」みたいな……一般論としては、組織の中ではそういう見方をして、何かダメじゃないかなってレッテルを貼ってしまったりっていう部分があるけど。実を言うと、その人はその人なりの価値があるんじゃないかって探すっていう視点がね、あると、またちょっと見方が変わってくるのかな、というようなことを学びますよね。

 

確か森に入った段階で、「森全体が一つの生き物」ということで言えば、みんな「森は全て我々が入ってること知ってるよ」っていうような話があって。一歩踏み込むと、その木一つだけじゃなくて森全体が、我々が入ってることを知ってるっていうのは、何かさっき言った「森全体が生き物」っていう部分も、何となく組織として見たときに、そういうことを考えたときに全然組織の見方が変わるなと。「自分のことしか考えてねえな」っていうふうに思う。私もそういう部分があると思うんだけど、多くの人もそうなんじゃないかなっていうところがね、なんか日々……そんな記憶を思い出しました。

 

北山:
そうですね。役割っていうのをね、あの「役に立つ」とか「役に立たない」とかっていうのを見たときに、それは結構一つの視点からしか見てない場合が多いと思うんですよね。人間みんなそうだと思います。もしかして他の生き物もそうなのかもしれないですけど。

 

樹海の隣の森、山の方に多いブナの木、ブナとかミズナラとかが多いんですけど、ブナの木なんかは漢字で書くときに「橅」って書くんですね。木へんに「無」いという字を書くんですね、ブナは、まずすごく狂いやすい。建材として狂いが出やすかったりとか、空洞が多かったり穴が開いてたりとか。「使い道がない」みたいなイメージで付けられた漢字だと私は聞いたんですけど。

 

これもあくまで人間の視点でしかなくて、一つの……「人間の視点」とすら言えないかもしれないですね。「建材として」とか「人間の道具として」みたいな視点でしかなくて。だけど、ブナの木がないと森は豊かにならない。ブナが自然に入るところですね、すごく保水能力が高くて、ドングリをたくさん落として、すごい樹齢が……ゆっくりゆっくり成長していくんで長くて、たくさんの生き物を養うんですよね。クマの問題なんかが「ブナの木が足りない」とか「ドングリが足りない」とかって言われますけれども、それぐらい実は自然界にとってとても重要な……ブナだけ重要と言ってしまうとおかしいかも、全てが重要なんですけど、そんな木なんです。

 

やっぱりある一つの視点から見てしまうと「使い道がない」とかっていう結論になってしまうので、その視点がいろいろあることによって……普段いない場所に行って、普段見ないものを見ることによって、視点が増えていくのかなっていう気はします。

 

(後編へつづく)

対談者紹介

廣川 進

Hirokawa Susumu

法政大学キャリアデザイン学部教授
日本キャリアデザイン学会前会長
臨床心理士

公認心理士

シニア産業カウンセラー
2級コンサルティング技能士

福武書店(現ベネッセコーポレーション)に18年勤務、育児冊子ひよこクラブ創刊などに携わった後、人事部にてヘルスケア部門の立ち上げ、採用、教育、異動、昇格などを担当。
退職後大正大学臨床心理学科教授を経て2018年より現職。
海上保安庁、警察庁、警察大学校等官公庁の他民間企業でカウンセラー、講師、メンタルヘルスの組織コンサルタントとして活動。研修支援領域はストレスマネジメント、メンタルヘルス、モチベーションマネジメント、キャリアデザイン等。

北山 哲平

Kitayama Teppei

富士山の森と湖畔を中心にネイチャーガイドとして活動。個人、グループ向けツアーのほか、企業研修としてネイチャープログラムを提供している。
観光業界で20年以上従事、無類の旅行好き。2年間バックパックで世界中を旅し、パキスタン、モンゴル、南米、オーストラリアなどをハイクする。
現在は日本で活動、ロッククライミングやシャワークライミング、ハイキングを楽しんでいる。
富士山を中心とした地域を探索、豊かな生物多様性に親しむ。日本文化の造詣も深く、歴史ある巡礼路を巡るツアーをガイドする。

吉田 有

Yoshida Tamotsu

株式会社Zentre 代表取締役 エグゼクティブコーチ

(社)インターナショナルZENカルチュラルセンター理事

ZENトレプレナー研究所 代表

BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ

30歳まで米国アラスカ州にあるパルプ会社に勤務。セスナ機でアラスカ中を飛び回る。

帰国後、中堅アパレル企業の経営の傍ら、カリフォルニア州で日本食レストランの経営や

イランへの文具輸出など、様々な事業を手掛ける。

50歳でビジネスコーチ株式会社を創業し、取締役に就任し人材育成を始める。

2011年青森県観音寺で得度(仏門に入る)

2017年(社)インターナショナルZENカルチュラルセンター設立理事

2020年ZENトレプレナー研究所設立し、代表となる

2023年に70歳で株式会社Zentreを設立し、代表取締役となる

ZEN(禅、然、善、全)をキーワードにエグゼクティブや企業に対してコーチングや人材開発を行っている。

安田 修

Yasuda Osamu

Zentreディレクター/青山学院大学文学部卒業

産業カウンセラー

国内旅行業務取扱管理者

教育サービス企業で帰国子女教育に10年かかわった後、組織再編に際し新会社でセミナー企画、セミナーハウスやコンファレンスセンター運営に携わる。2005年に研修の企画、運営、ビジネスイベントのロジスティック手配を手がける有限会社櫂の設立に参加。各種研修プログラムの企画開発、イベント手配、催行の経験を積む。Zentreではプログラム企画開発、カスタマーリレーションを担当。自然と触れ合いつつ対話や内省を深めるオフサイトミーティング、リトリートプログラムの造詣が深い。ビジネスパーソンがよりいきいきと働き、仕事を通じて幸せになることの支援をするのが信条。一般社団法人産業カウンセラー協会東京支部専門育成研修部副部長、有限会社櫂副代表。

成澤 友

Narisawa Yu

Zentre パートナー/中央大学文学部史学科卒

株式会社ToMoRu 代表取締役
HRD(人材開発)プロデューサー
レジリエンストレーニング認定講師
米国CTI認定コーアクティブ・コーチ(CPCC)

富士通系SI企業、人材紹介会社、生命保険会社にて、法人営業や代理店営業、ダイレクトマーケティング、キャリアカウンセラー、人事を経て株式会社ToMoRuを創業。子どもが「早く大人になりたい」と思えるような社会にするべく、社員が育つ組織づくりを目指して社外人事として企業に伴走。コーチングや対話のスキル・知識を活かして、人が育つ人事制度構築・運用や研修企画・実施の実績が豊富。
坐禅は毎朝の日課。禅的な考え方を研修やコーチングに活かすだけでなく、日々のランニングやマインドセットに応用するなど、日々、禅を実践・探求している。

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