成澤:初めて参加させていただいて、全体としてすごく良かったなと思っています。特に印象に残ったのは、樹海のトレッキングと翌朝の座禅、そして朝食ですね。シンプルなお粥を「うまい」と感じたこと自体が豊かだと思いました。普段そういう豊かさをないがしろにしていたことに気づけたのは、良い学びでした。
樹海のトレッキングで感じたのは、「自分とは別の存在がある」という感覚が少し変わったことです。今までは、大いなる存在的なものがあって、自分はそれとは別個のものだと感じていました。でもそうではなくて、自分もその大いなるものの一部なんだという感覚になったんです。どの瞬間というわけではないんですが、腹落ちする感覚がありました。
吉田:それはすごいですね。一部という感覚なんですね。
成澤:はい。循環的なものを肌で感じたからかもしれません。ガイドの北山さんが「森の中のすべてに役割があって、人間も本来そうなんですよね」と言ったとき、妙に納得しました。人間社会の中だけじゃなく、地球の中での役割を意識する視野が広がった気がします。
吉田:いいですね。その感覚が進むのはすごい。僕はまだそこまでいけてないな。トレッキングのときに、植物たちが我々が入ったことを情報共有してる、という話を聞いて、それを少し感じたくらいです。でも一体感まではいかなかった。そこまで感じ取れたのはすごいですね。
成澤:いや、たぶんあの場の雰囲気がそうさせたのかもしれません。そういう場に身を置くことを繰り返すと、またその感覚に近づけるのかもと思いました。
吉田:確かに。日常から離れるときに、その意識を持っていくだけで、感じ方が変わるかもしれませんね。
成澤:そうですね。意識しないと日常に戻っちゃう気がします。でも、あの感覚を覚えておけば立ち戻れる。あの感じをまた味わいたいです。
安田:僕の感覚では、一体感って一度感じると、日常に戻ってもまたその場に行けばスッと戻ってくるんですよね。今回もそうでした。電車の中では日常の雑多な感じがあっても、トレッキングでだんだん静まっていく。そして前回の感覚が蘇ってくる。自然との一体感もあるし、皆さんとの一体感もあって、普段話さないことが自然に出てきたり、相手の話に共感できたり。そういう一体感が生まれた二日間でした。
吉田:なるほど。樹海の一体感と同時に、人との一体感も強く感じたんですね。人間も自然の一部ですし、よくわかります。
安田:そうなんです。他者と一緒に暮らしたり働いたりしていても、どこか区切っている部分がありますよね。それがなくなって、本当につながっている感じになる。多分その瞬間、体の中でセロトニンが出てるんじゃないかなと思います。
成澤:確かにありますね。焚き火で話しているときとか、「なんとなくつながってるな」って感じました。厳密に説明できないけど、そう感じる瞬間がありました。
吉田:日常では無意識のうちに鎧を着てるじゃないですか。特に仕事の場では。それがなくなって、お互い素でつながれる感じって、いいですよね。
成澤:そうですね。年齢も関係なくフラットに話せて、すごく心地よかったです。僕が「吉田さん、早く寝たいだけじゃないですか」って突っ込んだら、「あ、バレたか!」って笑顔で返してくれたりして(笑)。そういうやりとりも楽しかった。
安田:ほんとそう。お互い自然体でいられた。
吉田:鎧を脱ぐための時間でもあるんでしょうね。環境がそれを促してくれる。
成澤:最近「現象学」っていう哲学分野の知識に触れていて、「関係性があるから創造性が生まれる」と書いてありました。まさに共創ってそういう関係性の上に成り立つんだと思います。
安田:吉田さん、今回のリトリートで新たな発見はありました?
吉田:そうですね。今回は「色即是空、空即是色」という言葉を意識して臨みました。行く前はイメージで準備して、バスで山に近づくにつれて心も整っていく。現地で体で感じ、また現実に戻る。その流れの中で、少し心が清らかになった気がします。星を見たときも、広がりの中に自分がいると感じられて、それが心地よかった。
安田:「清らか」というのはどういう状態ですか?
吉田:東洋思想のように、宇宙の仕組みを感じ取るような感覚です。それに近づけたという納得感が「清らか」という言葉になったのかもしれません。星を見て、広大な宇宙の中に自分もいると感じる瞬間が心地よくて。
安田:それってまさに「スピリチュアル・バット・ノット・リリジャス」ですね。宗教ではなく精神性の話。
吉田:そうですね。形のないものを感じることがあって、それが心の落ち着きにつながる。日常でもその感覚を保ちたいですね。
成澤:座禅も、そういう“立ち返る知恵”なのかもしれませんね。僕も自然の中を走るとき、木や土の匂いを感じることでリセットされます。なぜ日常ではそれが難しいのか、考えちゃいますね。
吉田:自然じゃなくても、美しいものを見ることでも同じ感覚になりますよね。音楽や芸術とか。人それぞれ「美しい」と思うもので心が洗われる。
成澤:僕は苔の写真をよく撮るんです。あの質感や静けさに美しさを感じて。美の感じ方は人それぞれだけど、集中しているときの心地よさってありますよね。仕事の中でも“美しさ”を意識できたら、もっと豊かになるかもしれないなと思います。
安田:僕も空や水面を見て、色や光を感じるだけで心が整う気がします。都会の中では頭ばかり使ってバランスを崩すけど、リトリートでリセットされると自然と利他の感覚が戻ってくる。まるでコップを空にするような感じですね。
成澤:利他って、人間のデフォルトなんじゃないかと思います。利他が気持ちいいって感じるなら、それは自然なこと。樹海の中でも感じたけど、循環そのものなんですよね。
吉田:そう思います。利他や循環は宇宙の仕組み。日常では矛盾も多いけど、それも生きる意味の一部なんでしょう。矛盾があるから気づける。最近は矛盾を歓迎してます。矛盾の中からイノベーションも生まれるし、理解も広がる。
成澤:矛盾って、突き詰めると“違い”ですよね。トレッキングのとき、北山さんが「木は同じ種でも遺伝子が少しずつ違う」って話していました。その違いがあるから変化に対応できる。矛盾や違いがあるからこそ持続できる。納得しました。
安田:確かに。森の中でも木々は競い合いながら共生している。個々では戦いながら、全体では調和している。まさにネガティブ・ケイパビリティですね。すぐに答えを出さず受け止める力。
吉田:一はすなわち多、多すなわち一。まさにそれですね。
成澤:リトリートって、そういうことを体で感じられる場なんだと思います。
安田:ですね。もっと育てていきたい。この西湖のリトリートを。
吉田:僕もそう思います。森の学びは組織論にも通じる。北山さんを呼んで、企業の中でどう活かせるか話してもらったら面白いですね。
安田:いいですね。きっと協力してくれると思います。
吉田:では、次回もよろしくお願いします。
成澤:よろしくお願いします。
法政大学キャリアデザイン学部教授日本キャリアデザイン学会前会長臨床心理士
公認心理士
シニア産業カウンセラー2級コンサルティング技能士
福武書店(現ベネッセコーポレーション)に18年勤務、育児冊子ひよこクラブ創刊などに携わった後、人事部にてヘルスケア部門の立ち上げ、採用、教育、異動、昇格などを担当。退職後大正大学臨床心理学科教授を経て2018年より現職。海上保安庁、警察庁、警察大学校等官公庁の他民間企業でカウンセラー、講師、メンタルヘルスの組織コンサルタントとして活動。研修支援領域はストレスマネジメント、メンタルヘルス、モチベーションマネジメント、キャリアデザイン等。
株式会社Zentre 代表取締役 エグゼクティブコーチ
(社)インターナショナルZENカルチュラルセンター理事
ZENトレプレナー研究所 代表
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ
30歳まで米国アラスカ州にあるパルプ会社に勤務。セスナ機でアラスカ中を飛び回る。
帰国後、中堅アパレル企業の経営の傍ら、カリフォルニア州で日本食レストランの経営や
イランへの文具輸出など、様々な事業を手掛ける。
50歳でビジネスコーチ株式会社を創業し、取締役に就任し人材育成を始める。
2011年青森県観音寺で得度(仏門に入る)
2017年(社)インターナショナルZENカルチュラルセンター設立理事
2020年ZENトレプレナー研究所設立し、代表となる
2023年に70歳で株式会社Zentreを設立し、代表取締役となる
ZEN(禅、然、善、全)をキーワードにエグゼクティブや企業に対してコーチングや人材開発を行っている。
Zentreディレクター/青山学院大学文学部卒業
産業カウンセラー
国内旅行業務取扱管理者
教育サービス企業で帰国子女教育に10年かかわった後、組織再編に際し新会社でセミナー企画、セミナーハウスやコンファレンスセンター運営に携わる。2005年に研修の企画、運営、ビジネスイベントのロジスティック手配を手がける有限会社櫂の設立に参加。各種研修プログラムの企画開発、イベント手配、催行の経験を積む。Zentreではプログラム企画開発、カスタマーリレーションを担当。自然と触れ合いつつ対話や内省を深めるオフサイトミーティング、リトリートプログラムの造詣が深い。ビジネスパーソンがよりいきいきと働き、仕事を通じて幸せになることの支援をするのが信条。一般社団法人産業カウンセラー協会東京支部専門育成研修部副部長、有限会社櫂副代表。
Zentre パートナー/中央大学文学部史学科卒
株式会社ToMoRu 代表取締役HRD(人材開発)プロデューサーレジリエンストレーニング認定講師米国CTI認定コーアクティブ・コーチ(CPCC)
富士通系SI企業、人材紹介会社、生命保険会社にて、法人営業や代理店営業、ダイレクトマーケティング、キャリアカウンセラー、人事を経て株式会社ToMoRuを創業。子どもが「早く大人になりたい」と思えるような社会にするべく、社員が育つ組織づくりを目指して社外人事として企業に伴走。コーチングや対話のスキル・知識を活かして、人が育つ人事制度構築・運用や研修企画・実施の実績が豊富。朝の坐禅が日課。禅的な考え方を研修やコーチングに活かすだけでなく、日々のランニングやマインドセットに応用するなど、日々、禅を実践・探求している。